ヨーロッパのようでヨーロッパでない

空港からホテルに向かう車から、ざっと国の概観をつかむ。ゴミがあまり落ちていない。物乞いが少ない。車がきれい。車の窓がある。サイドミラーがついてる。クラクションがけたたましくない。高速道路がある!途上国じゃないところにやって来た。

ホテルでシャワーを浴び、事務所を訪問し、事務所の方においしいイタリアンに連れて行ってもらう。うまい。ここはヨーロッパじゃなかろうか。そんな感想をこの方に伝えたところ、「僕も最初はそう思ってました」と。でも実際に住んでみると、ヨーロッパなのは一部だけで実際は途上国みたいなもんですと言う。銀行は建物の外までものすごい列だし、理不尽なことで警察に拘束されるし、賄賂だってまかり通ると言う。さらにこの国にはパラグアイ移民が120万!ボリビアエクアドルからもアメリカに行けない人たちが大勢やってきて働くため、労働者階級の仕事はほとんど近隣諸国の人によって支えられているらしい。ここに来るまで知らなかったんだけど、アルゼンチンのGDPは1976年まで日本よりも高く、その昔はアルゼンチンの地下鉄の技術を習いに日本から視察が来たほどだったとか。それが今では、アルゼンチンが日本の地下鉄の中古を輸入しているというからわからないものだ。日本が急速に発展したとは言え、アルゼンチンの変わらなさは目を見張るものがあるのかもしれない。

午後は、省庁や国際機関を訪問し、今回出席する会議の位置づけやこの国の教育システムについて簡単な聞き取り。スペイン語には「あなた」と言うときに、初めて会った人や目上の人に対する敬称と、親しい間柄で用いる言い方と2通りあるのだけど、アルゼンチンの人はいきなりカジュアルな「Tu」で話してくるのでやや戸惑う。さらにアルゼンチン人特有の鼻にかかった発音に、いちいち反応してしまう。でも、アルゼンチンの男の人ってなんか色っぽくて好き。キョロキョロしながら歩く。

夜はおいしいアルゼンチンの肉を食べ、ありえないくらいになみなみとつがれたワインを飲み、あっという間に酔っぱらい。肉は3人分くらいあろうかと思うくらいに分厚くでかく、食べ物を残さないことが信条の私でもどうしても最後まで食べきることができなかった。泣く泣くギブアップ。でも肉はジューシーで柔らかくてうまい。この肉で、アルゼンチンに住んでもいいかなと思った人は私だけではないはずだ。

日本を出てから40時間強。久しぶりに夜を迎えて、さすがの私もバタンキュー。