埃のストーカー

アメリカから帰国する頃から左目の調子が芳しくない。目の前に髪の毛というか埃というか小さな糸みたいなのがずっと漂っていて、右を見ると右に、左を見ると左にとずっと付いてくる。ストーカーかよ。目をつぶってもそこにいる。時々、パソコンのスクリーンセーバーみたいに3Dになって近づいてきたり、点になって向こうの方に行ったりしながらも付いてくる。

仕事を早退して近所の眼科に行ったら、硝子体剥離との診断。「平たく言うと、強度近視に起こる老化みたいなものです」と。ろ、老化、ですか。なんかショックな言葉だな。問題は今回の目的じゃなかった右目。緑内障の気がある。これは想定内。網膜にボコボコの穴があって、放っておくと網膜剥離になる可能性もあるから早めにレーザーで焼いた方がいいと。さらにあれもこれもと問題を指摘され、私の中にある小さい理解能力ボックスが飽和状態となり、それ以降はなんだか理解しきれず声が流れてく。

この女医さん、「どこから話そうかな」と言いながら、募る気持ちを早く放出したいワクワクさみたいなものを感じているようだった。決して悪い意味ではなくて、使命感というか、介入せずにおれない気質というか。チャキチャキ小気味よい先生で信頼できそうな感じがしたので、しばらく通ってみよう。