この変態を恋愛という

tomokito2010-09-01

有馬温泉ではっと思い出した宮沢賢治の「春と修羅」。

もう決定した そつちへ行くな
これらはみんなただしくない
いま疲れてかたちを更へたおまへの信仰から
発散して酸えたひかりの澱だ
ちひさな自分を劃ることのできない
この不可思議な大きな心象宙宇のなかで
もしも正しいねがひに燃えて
じぶんとひとと万象といつしょに
至上福祉にいたろうとする
それをある宗教情操とするならば
そのねがひから砕けまたは疲れ
じぶんとそれからたつたもうひとつのたましひと
完全そして永久にどこまでもいつしょに行かうとする
この変態を恋愛といふ
そしてどこまでもその方向では
決して求め得られないその恋愛の本質的な部分を
むりにもごまかし求め得ようとする
この傾向を性慾といふ

この詩を初めて読んだとき、この変態が恋愛だというくだりが妙にしっくりきた自分にびっくりしたのを思い出した。宇宙にも変態が存在しえる感じがよい。