さようなら、銀

tomokito2008-10-09

1997年3月、私は1台の自転車を買った。三宮の小さな自転車店の店先に飾られていた彼とふと目があった。銀色がぴかぴかに輝いていた。大学5回生を卒業するとき、私はその自転車を買い、名前を銀と名付けた。

あれから10年。色々一緒に旅をした。徳島の野山を一緒に駆け回ったり、四国八十八ヶ所巡りに一緒に行ったりした。屋久島にも行った。そして、鹿児島から北海道まで一緒に日本を縦断した。カンボジアに行っている間は姫路の友達んちに奉公に出され、イギリスに行っている間は輪行袋の中で猫の住処となった。東京時代は通勤のお供として毎日新宿を闊歩した。行方不明になったこともあった。ホンジュラスに来る前、東京の知り合いに預かってもらったのだけど、数日前連絡があり、銀が盗難にあったようだと。ここ1ヶ月姿を見ないと思っていたら、いなくなっていたらしい。

どこで誰が銀に乗っているかは分からない。でも、どこで誰に乗られていようと元気に生きていて欲しい。どうか、どこかで乗り捨てられていませんように。どうか、サドルやタイヤだけ盗られてバラバラになっていませんように。どうか、どうか、フレームがぐにゃっと曲がったり、タイヤに穴があけられたり、痛い目にあっていませんように。

あなたと過ごした10年、とても楽しかった。ありがとう。そしてさようなら。