「旅をする木」

星野道夫展に行き、その素晴らしさに感動したと父からメールがあった。

私が海外に出るときに必ず持って出る本の1つが星野道夫の「旅をする木」。決してこなれた文章ではないけれど、自然がいかに人間の営みを超えたところに存在するかを、大げさではない淡々とした言葉の1つ1つで語る。世界の様々な事件やニュースが世間を騒がせる中、そんな世界とは無関係の如く自然はただそこに悠々と存在していて、でもそれと同時に、人の営みとはかけ離れたところにあるこの自然に私たちは属している、そんなことに気付かせてくれる。この本を読むたびに、いつも何かに振り回されている自分を自然との位置関係に照らし合わせてリセットできる感じがするんだ。

私はこの本に出てくるクジラの話が好きだ。

ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。

立ち止まったり、悩んだり、へこんだり、嬉しかったり、そんな日々の中で、自分を軸にするのではなく、自分を取り巻く目には見えない大きなものを軸に、ぶれない日々を送りたいと改めて思った。明日からも頑張ろうっと。