「誰も知らない」

tomokito2014-03-09

1日家にこもって延々と確定申告。だいぶ目処がたった。日曜なのに仕事した気分。疲労感いっぱい。

金曜から土曜にかけて、家で夫と映画「誰も知らない」を見た。映画館で見たあの衝撃から約10年。今まで見た洋画や邦画の中で、まだこの作品を超える映画には出会っていない。10年ぶりにもう一度見たけど、前回よりもさらに苦しく、胸が痛く、声にもならない声と嗚咽にむせびながら、しゃくりあげながら、なんとか最後まで見た。心が痛い。

これは昔おこった西巣鴨子ども4人置き去り事件をモチーフにしているのだけど、ただ単にひどい母親が子どもを置き去りにしたという悲惨な事件としてとらえるのではなく、いや死が関わっているのだから悲惨ではあるのだけど、でもそれだけではないというところを是枝監督は丁寧にとらえて映し出している。それぞれ父親が違うという4人の子どもをほったらかしにして出て行った確かにひどい母親ではあったけど、一緒にいる時間を大切にし、1人1人を愛していたという時間があったからこそ、母親がいなくなった後も子ども達は兄弟全員で肩を寄せ合いながら共に暮らし、喜怒哀楽を分かち合うことを選択した。

以下、DVDに添付されていた是枝監督の「演出ノート」より。

その後の調べで、兄は心ならずも死なせてしまった妹を山中の雑木林に埋葬し、電車に乗って何度もお墓参りに出掛けていたことが明らかになった。保護者遺棄の罪を問う裁判の法廷で母に再会した少年は、彼女の期待に応えられなかった自分を責めて涙を流したそうである。この一連の事件の登場人物の中で、唯一この少年だけが、自らの責任を全うしようとした。そして、全うできずに自分を責めていた。14歳のこの彼だけが−。ここまで事件を辿って来た時に、僕はこの少年がいとおしくてたまらなくなってしまったのである。甘く聞こえてしまうのは本意ではないのだが、もしそばにいたら、僕は彼の肩を抱いてあげたいと思ったのだ。「よく頑張ったね」と。「僕は君のことが好きだよ」と。しかし、現実にそうすることは不可能だった。だから僕は、僕の心の中で彼をしっかりと抱きしめるためにこの映画を作ることを決意した。

あまりにも複雑な感情が自分の中に渦巻きすぎて、またすぐにこの映画を見ることはできない。また10年後にこの映画を見よう。そしてきっと私はまた泣かずにいられない。

http://www.youtube.com/watch?v=GLtMmJoBIB4:MOVIE