室生犀星を読みながら上流へ

tomokito2011-02-06

金沢2日目。本当はちょっと早起きして、バスで1時間くらいのところにある湯桶温泉に行こうと思っていたのだけど、朝ごはんの余韻に浸っている間に乗りたかったバスは行ってしまい、「ま、金沢でのんびりすっか」的空気と共に、結局町中にある銭湯でゆっくり温泉に浸かったりした。

金沢旅行のほとんどは、七尾出身で金沢に住んでいたという同僚カップルが行くべき場所を教えてくれていて、ほとんどその地図だけを頼りに町を歩いた。るるぶなんて必要ないってくらいに、色々書きこんで渡してくれた地図には、室生犀星が育った雨宝院とそのほとりに流れる犀川を散歩すべしとの書き込みがあり、武家屋敷跡野村家を訪れた後、犀川大橋から犀川の川縁へ降りる。同僚の地図によると、犀川散歩のポイントは「室生犀星を読みながら上流に向かって散歩すること」らしいので、私たちも室生犀星を声に出して朗読しながら、しとやかな雪道を上流に向かって歩く。時折さすあたたかくやさしい冬の光に雪が反射して、眩しい。

犀川

うつくしき川は流れたり
そのほとりに我は住みぬ
春は春 なつはなつの
花つける堤に坐りて
こまやけき本のなさけと愛とを知りぬ
いまもその川のながれ
美しき微風とともに
蒼き波たたへたり

犀川散歩の後、21世紀美術館で空間の美しさに見とれ、外から中から美術館を味わってから、昨日のBarで知り合った人が勧めてくれた近江市場の丼やさんで溢れんばかりの海鮮丼を食べ、夕刻後ろ髪をひかれながら金沢を後にする。

サンダーバードに乗って本を読んでいるうちに寝てしまい、ふと目が覚めたらもうそこは雪の欠片も見られない都会だった。都会育ちの私はきっと雪国に住めないだろうと思うけど、雪がない冬は物足りないと思う人の気持ちがちょっと分かる気がした。