外国語で気持ちを正確に伝える

最近、交渉レベルSの仕事が続いていて、心臓がもう1つ必要だ。政治が絡む難しい交渉は、話をしながら、手に汗をかき、心臓がばくばくする。でも、そんな様子を見せずニコニコしながら、言いたいことをやんわりと、でも的確に伝え、できれば相手の回答を自分の想定している方向に持っていき、かつ相手が話していることを「想像」ではなく「間違いなく理解する」という技が必要になる。

そこで最近読んだ村上春樹の「やがて哀しき外国語」に書かれていたことを思い返すようにしている。

僕の経験から言うなら、外国人に外国語で自分の気持ちを正確に伝えるコツというのはこういうことである。
(1)自分が何を言いたいのかということをまず自分がはっきりと把握すること。そしてそのポイントを、なるべく早い機会にまず短い言葉で明確にすること。
(2)自分がきちんと理解しているシンプルな言葉で語ること。難しい言葉、カッコいい言葉、思わせぶりな言葉は不必要である。
(3)大事な部分は出来るだけパラフレーズする(言い換える)こと。ゆっくりと喋ること。できれば簡単な比喩を入れる。
以下の三点に留意すれば、それほど言葉が流暢じゃなくても、あなたの気持ちは相手に比較的きちんと伝えられるのではないかと思う。

彼は言う。楽器の演奏に例えるなら、途中でつっかえて演奏を中断してしまっても心を打つ演奏はあるはずだと。私もできればなめらかで心をうつ演奏をしたいけど、今はその技術がまだ十分ではないので、カッコつけず、誠心誠意を込めて演奏することだけは忘れずにいたい。