ねぶたの日々

昨日の夜、見慣れない電話番号の人から電話がかかってきた。出てみると、なんと2004年のねぶた祭りで出会った人。

自転車で日本縦断旅行をしていたときに青森で出会った人が、小さい頃からねぶた祭りに命をかけている人で、その人がそんなにも人生をかけているねぶたを見てみたいと思った。そしてその年のねぶた祭りに行き、すっかりはまってしまった。ねぶた祭りのときには日本全国からやって来るライダーやチャリダーのために県が特設キャンプ場を用意してくれるんだけど、そこに100人を超える人が集まってテントを張って、毎晩ねぶたで跳ねる。そして毎日同じような生活を繰り返しているうちに、テントの周りの人たちと仲良くなり、昼間はキャンプ場で昼寝、酒盛り、料理、音楽、銭湯でゴロゴロ、夕暮れ辺りからみんな浴衣に着替え、ねぶたで跳ねてから、また夜遅くまで酒盛り。そんな日々を1週間。(こんな感じ

ねぶたのキャンプ場に毎年やって来る人達が毎年同じ場所に陣取っていたり、沖縄や北海道のキャンパー達がねぶたのキャンプ場で再会を誓ったりしていて、キャンプ場はさながら同窓会の模様を呈していたりする。新参者の私は最初ちょっと戸惑ったけど、「ネェチャン、そこは雨が降ったら水はけが悪い場所やで」なんて声をかけてもらったりしつつ、仲のいい人たちが出来て、毎朝昼晩出入りするタープも決まってきた。キャンプ場というのは1つの社会であり、1つの文化である。例えば、キャンプ場に泊まっている人たちにはキャンプネームがある。私のテントのまわりの住人達は、べかこさん、たっぷ、そいさん、修造、サミュエル、パンプ、おいどん、どぶさん、はなさんなどなど。どぶさんはもともとホタテさんと呼ばれていたが、ある日のねぶたの帰り、酔っ払ってどぶに落ち、その日からキャンプネームがどぶさんに変わった。とにかく色んな人がいたけれど、誰1人として本名を知らないという不思議な世界だ。私が2004年のねぶたでつけられたキャンプネームが、知子→ちこ→ちこつ、で何故かチコツ姉さん。昨日いきなり電話で、「チコツねぇ」なんて呼ばれたもんだから、びっくりするよ、そりゃ。

電話をしてきたへびじは、1年半くらい日本全国をバイクでウロウロしていた人。沖縄の製糖工場で働いたり、北海道のユースでヘルパーをしたりしながら、旅を続けてきて、今はねぶたで出会ったべかさんの家に遊びに来たらしい。半年に一回くらい、突然電話がかかってくる。べかこさんからは、年末年始にはキャンパーが和歌山の千人湯に集まって年越しキャンプをやるから、チコツ姉さんもキャンプにおいでというお誘い。キャンプ心がうずうずする。

色んな生き方がある。会社で働くだけが人生じゃない。何がいい、何が悪いというもんでもない。だけど、私はこんな風に自由に生きている人たちと知り合って、人生の時々でたまにこの自由さを一緒に楽しんでいたい。あのキャンプ場で近くにテントをはっていたおいどんは、協力隊でタンザニアに行った。世間は狭いもんだね。